超電導リニアによる中央新幹線計画は、当社の経営の生命線である東京~名古屋~大阪の日本の大動脈輸送を二重系化し、東海道新幹線の将来の経年劣化や大規模災害といったリスクに抜本的に備えるためのプロジェクトです。これにより、当社の経営リスクをさらに低減させることで経営の安定化を図り、東京~名古屋~大阪の高速大量旅客輸送を担うという当社の設立以来の使命を将来にわたって果たし続けていくとともに、その高速性による時間短縮効果によって利便性を飛躍的に向上させ、日本の経済社会に大きな便益と発展の可能性をもたらすことで、株主をはじめとしたすべてのステークホルダーの利益を長期にわたり確保していきます。
中央新幹線の概要・意義
当社は、自らの使命であり経営の生命線である首都圏~中京圏~近畿圏(東京~名古屋~大阪)を結ぶ高速鉄道の運営を持続するとともに、企業としての存立基盤を将来にわたり確保していくため、超電導リニアによる中央新幹線計画を全国新幹線鉄道整備法(以下、全幹法)に基づき、進めています。
東海道新幹線は、開業から半世紀以上が経過し、大規模改修工事等を講じてきてはいますが、将来の経年劣化による大幅な設備更新に伴う運休等のリスクが存在します。また、日本は地震大国であり、東海道新幹線では耐震補強等の対策を講じてきていますが、大規模地震により長期不通となり、日本の大動脈輸送が断絶する可能性が否定できないなど、大規模災害のリスクも存在します。このため、これらの将来の経営リスクに対する抜本的な備えとして、東海道新幹線の役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提に、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現して日本の大動脈輸送を二重系化し、東海道新幹線と一元的に経営していくこととしています。
南海トラフ巨大地震の想定震度の最大値の分布図
- 出典 中央防災会議「南海トラフ巨大地震対策について(最終報告)」(2013年5月)を元に作成
国家的プロジェクトとしての中央新幹線計画
中央新幹線は、国民経済の発展及び国民生活領域の拡大並びに地域の振興に資することを目的に、国にとって基幹的なインフラを整備するための法制である全幹法に則って、建設しているものです。当社はこれまで、全幹法に基づき、2011年5月に国土交通大臣より営業主体・建設主体の指名及び建設の指示を受けて以降、第一局面として進める東京都・名古屋市間において、環境アセスメントの手続きを実施して最終的な環境影響評価書を公告したのち、 2014年10月に国土交通大臣から工事実施計画の認可を受けています。
一方で、当社は、全幹法の適用により経営の自由や投資の自主性等、民間企業としての原則が阻害されることがないことを確認するため、法律の適用にかかる基本的な事項を国土交通省に照会し、 2008年1月にその旨の回答を得ています。当社は、中央新幹線計画の完遂に向けて、東海道新幹線と在来線における安全・安定輸送の確保と競争力強化に必要な投資を行うとともに、健全経営と安定配当を堅持し、コストを十分に精査しつつ、柔軟性を発揮しながら着実に取り組みます。その上で、まずは工事実施計画の認可を受けた東京都・名古屋市間を実現し、さらに、大阪市まで実現することとしています。
全国新幹線鉄道整備法の手続きの流れ
整備計画の内容
- 出典 建設に要する費用の概算額には、利子を含まない
品川・名古屋工事実施計画の概要
中央新幹線がもたらす新たな価値
超電導リニアによる中央新幹線の実現は、東京~名古屋~大阪の日本の大動脈輸送を二重系化し、さらには、三大都市圏が1つの巨大都市圏となるなど、日本の経済・社会活動の活性化に貢献。
- ※1 人口は総務省「住民基本台帳に基づく人口、人口動態及び世帯数」(2023年1月1日)より。
GDPは内閣府「県民経済計算」(2018年度)より - ※2 中間駅名は仮称
- ※3 「中央新幹線品川・名古屋間工事実施計画(その2)」 (2018年3月)より
- ※4 「中央新幹線(東京都・大阪市間)調査報告書」(2009年12月)より
当社は、中央新幹線計画を完遂することにより、経営リスクを低減させて経営基盤を安定させ、当社の使命を将来にわたって果たし続けていきます。さらに、中央新幹線の走行方式を超電導リニアとすることで、都市間の移動に圧倒的な時間短縮効果がもたらされ、三大都市圏が1つの巨大都市圏、いわゆる「スーパー・メガリージョン」となり、人々の交流が非常に活発となるなど、経済・社会活動が活性化すると考えられ、当社の経営面でも大きなプラス効果が期待されます。
1新規需要の創出
新幹線と航空機との競争においては、新幹線の移動時間が短くなるほど新幹線のシェアが増える関係にあるため、超電導リニアの時間短縮効果により、航空機から中央新幹線への需要の転移が見込まれます。また、飛躍的な時間短縮に伴い都市圏間の流動が大いに活性化することによる需要の新規誘発も十分に期待できます。
さらに、神奈川県、山梨県、長野県、岐阜県等、各中間駅の新規利用が期待されることに加え、東海道新幹線においても、例えば「のぞみ」をご利用のお客様が中央新幹線に転移することによって生じる輸送力の余裕を活用して、「ひかり」「こだま」の運転本数と停車回数を増やす余地が出てくれば、沿線都市と三大都市相互間の移動時間やフリークエンシーが大幅に改善し、人々の流動が増加する可能性があります。
世界最速のスピードで、沿線各地がより身近に
東海道新幹線の活用可能性が拡大
- 「のぞみ」のご利用の一部が中央新幹線にシフトして、「ひかり」「こだま」の増発余地が生じる
2経済・社会への幅広い波及効果
超電導リニアによる圧倒的な時間短縮効果により、東京~名古屋~大阪が約1時間で結ばれ、三大都市圏が、日本の人口の半数を超える合計約6,600万人という1つの巨大都市圏となります。
この「スーパー・メガリージョン」が、例えば、活動範囲の広域化により、ビジネスの進め方や余暇の過ごし方等のライフスタイルを大きく変化させ、様々な可能性を広げるなど、人口減少下にある日本の新しい成長を牽引していくコアとなっていくことが期待されており、国土交通省が設置した「スーパー・メガリージョン構想検討会」の最終とりまとめ「人口減少にうちかつスーパー・メガリージョンの形成に向けて ~時間と場所からの解放による新たな価値創造~」(2019年5月)では、「リニア中央新幹線がもたらすインパクト」等として、以下のような内容が挙げられています。
『スーパー・メガリージョン構想検討会』最終とりまとめ」 (2019年5月)より
- 人と人とのフェイス・トゥ・フェイスでの交流機会が増加し、交流時間が拡大することで、新たなイノベーションを生み出す契機となる。
- これまでの働き方や暮らし方を制約する要因であった「時間」と「場所」から人々を解放し、多様な選択肢をもたらすことで、ビジネススタイル・ライフスタイルに変化をもたらすことが期待される。
- 三大都市圏の一体化によってスーパー・メガリージョン全体が新たな価値と成長産業を生み出し、海外から人や投資を呼び込む上での魅力の向上に繋がる。
- リニア中央新幹線と新幹線・高速道路ネットワークが有機的に繋がることで、国土の骨格に関わる高速交通ネットワークの多重性・代替性を強化し、持続的なヒト、モノの流れを確保することが期待される。
- 三大都市圏の間に位置する中間駅周辺地域から新たな地方創生が始まることや、スーパー・メガリージョンの効果がリニア中央新幹線沿線以外にも広域的に拡大することが期待される。
なお、国土交通省がとりまとめた「国土政策シミュレーションモデル」によれば、中央新幹線開業によるスーパー・メガリージョンの形成に伴う生産性の向上効果として、GDPが、名古屋までの開業で年間3.5兆円、その後の大阪までの開業で年間6.5兆円押し上げられると試算されています※。
このように、中央新幹線の開業がもたらす移動時間の劇的な短縮は、国土全体に大きなインパクトを与え、新たな価値の創造、さらには日本全体の持続的な成長につながるものです。
- 国土交通省国土政策局「平成29年度国土政策シミュレーションモデルの開発に関する調査報告書」(2018年7月)