不断の安全対策の取組み
安全・安定輸送の確保は、すべての事業展開の大前提であり、鉄道の原点であることから、当社は一貫して最優先に取り組んできました。具体的には、人口と経済が集積し、社会・文化の中心でもある東京~名古屋~大阪を結ぶ大動脈としての東海道新幹線と、名古屋・静岡を中心に、通勤・通学をはじめとする日常生活での移動手段を支える社会基盤としての在来線について、人、技術、設備のあらゆる面から安全対策を進めることで、安全かつ強靭なインフラの構築を進め、日本の経済活動や社会活動を持続可能な形で支えています。
ハード面である設備について言えば、会社発足以来、2022年度までの36年間に、総額4.4兆円を超える安全関連投資を行ってきており、2023年度の計画においても、中央新幹線を除いた設備投資額(単体)の約8割に当たる1,930億円を計画しています。具体的な取組みとしては、東海道新幹線の土木構造物について、将来的に経年劣化による大幅な設備更新が必要になることから、2013年度から大規模改修工事を実施し、健全性の維持・向上を図っています。また、地震対策や自然災害対策についても、過去の被害や最新の知見に基づき、その時点で取り得る対策を間断なく実施してきました。
ソフト面においても、規程等のルールを中心に、安全を守る仕組みを不断に構築してきました。また、こうした仕組みを運用していくために、規律意識の向上等の人材育成を進めるとともに、実践的な訓練を繰り返し実施しています。
安全関連投資額の推移
災害対策の推移(抜粋)
新幹線第2総合指令所
東京の総合指令所と同じ機能を持ち、同指令所が被災した場合に代替の指令所として機能する新幹線第2総合指令所を大阪に設置し、異常時に対する危機管理体制を強化しています。
駅天井の脱落対策
駅の安全性を高めるため、お客様のご利用が多い駅の吊り天井(建物本体から吊り下げる構造の天井)について、2016年度から脱落対策を実施しています(新幹線は全17駅、在来線はお客様のご利用が1日1万人以上の30駅)。
プラットホーム上家の耐震補強
2021年度からプラットホーム上家の耐震補強を実施しています(新幹線は品川駅を除く16駅、在来線はお客様のご利用が1日1万人以上の駅のうち対策不要の駅やレール造の上家等を除く24駅)。
盛土張りコンクリート工
東海道新幹線構造物の多くを占める盛土については、防災強度向上のため、従前からの対策に加えて、2000年度より張りコンクリート工を施工しました。こうした対策により、降雨による運転中止規制値を時雨量50mmから60mmに向上しました。
サイバーセキュリティ対策
システム面でも安全かつ強靭なインフラの構築に向けた取組みを進めています。地震等の災害時やシステム故障等によりお客様へのサービス提供や社内の業務遂行が滞ることがないよう、設備の二重系化やバックアップの確保等、必要な対策を講じています。例えば、新幹線運行管理システムでは、東京のシステムセンターが被災した場合に備えて大阪に代替のセンターを設置しているほか、エクスプレス予約システムでは、複数のコンピュータで構成することで、1台が故障しても十分な処理能力を有する仕組みとしています。加えて、災害やシステム障害を想定した訓練を定期的に実施しています。
さらに、近年増加しているサイバー攻撃に対しても、万全なシステムセキュリティ対策を講じています。例えば、列車の運行に関するシステム等、絶対的な安全の確保が必要なシステムについては、外部との接点を無くした独立したシステム構成とすることで、外部からの攻撃を受けない仕組みとしています。
抜本的対策としての中央新幹線計画
以上のような取組みに加え、今後も安全・安定輸送を最優先に、日本の大動脈輸送の維持・発展という使命を果たし続けるため、中央新幹線計画に取り組んでいます。東海道新幹線は、開業から半世紀以上が経過し、大規模改修工事等を講じてきてはいますが、将来の経年劣化による大幅な設備更新に伴う運休等のリスクに備えておく必要があります。また、東海道新幹線では耐震補強等の対策を講じてきていますが、万が一大規模地震により長期不通となり、日本の大動脈輸送が断絶するリスクについても同様に備えが必要です。これらの将来のリスクに対する抜本的な備えとして、東海道新幹線の役割を代替する中央新幹線について、自己負担を前提に、当社が開発してきた超電導リニアにより可及的速やかに実現して日本の大動脈輸送を二重系化し、経営リスクを低減させ、経営の安定化を図り、当社の使命を将来にわたり力強く果たし続けていきます。