ぴよりん
JR東海グループの事業展開
当社グループでは、運輸、流通、不動産、その他の各事業を展開しています。運輸部門では、鉄道事業に加えバス事業を、流通部門では、百貨店の運営や駅・車内における物品・飲食物等の販売サービスを行っています。不動産部門では、駅及び高架下の開発や、駅ビル等の不動産賃貸等を行っています。その他の事業部門では、ホテル事業や旅行業、広告業等を展開しているほか、鉄道車両等の製造、各種鉄道設備の保守・検査・修繕等を行っています。事業展開における戦略は、これまで鉄道事業と相乗効果の高い分野での鉄道利用者を中心とした事業への投資を優先していました。しかしながら新型コロナウイルス感染症により当社グループの経営環境が一変したことを受け、事業展開においては、沿線居住者にも着目し、新たなライフスタイルに適した街づくりや生活サービスを通じて沿線都市の価値を高めるとともに、移動を多様なライフスタイルの実現を支える重要な手段と捉え、乗車前後を含む一連の移動をより便利で快適なものにすることで、移動の価値も高め人々の豊かな暮らしを実現することを目指しています。これを実現するための原動力として、グループ各社が顧客視点によるサービス提供をより重視するなどの変革に取り組むこと、自治体や事業者との連携、DXの推進の3つを重視しています。また、鉄道利用者、観光客、沿線居住者、自治体・事業者の4者との接点を増やし、潜在的なニーズや沿線地域の課題を把握し、新たな価値を提供することも大切にしています。
顧客視点によるサービスの提供
当社グループの事業展開においては、駅という立地に依拠して、サービスを提供することが多くありましたが、消費者が自身の嗜好や意志により行動を選択する傾向が強まるなか、顧客視点で商品やサービスを考えるよう努めています。
JR東海リテイリング・プラスの発足
プレシャスデリ&ギフト京都
当社の駅構内を中心に小売店舗を運営する東海キヨスクとジェイアール東海パッセンジャーズは、2023年10月に合併し、株式会社JR東海リテイリング・プラスとなりました。これは、仕入れや配送などの効率化を目的にしているだけでなく、これまで東海キヨスクは土産品を中心に、ジェイアール東海パッセンジャーズは弁当を中心に扱っているなか、顧客視点に立ち返ると、列車に乗車するまでの短い時間で土産品・弁当・飲料等をワンストップで購入できる環境が求められており、駅構内の店舗の集約や大型化により、こうしたニーズに応えることを目的としています。
京都・奈良での新規ホテル開発
当社はこれまで、当社エリア最大の観光資源である京都・奈良について、継続的なキャンペーンを地元や旅行会社とともに実施し、主に首都圏から関西圏への新幹線のご利用を促進してきました。一方で、当社グループのホテル事業展開は、駅など自社用地を活用することに主に注力してきたため、関西圏でのホテル展開は行っておらず、京都や奈良を訪れるお客様の宿泊需要には応えられていませんでした。これに応えるべく、ジェイアール東海不動産とジェイアール東海ホテルズは、新規ホテル開発に取り組んでいます。京都においては、京都駅八条口より徒歩3分の交通利便性が非常に優れた土地を取得し、2026年に「コートヤード・バイ・マリオット京都駅」を開業予定です。東海道新幹線を利用し京都を訪れるお客様の宿泊需要を取り込むことに加え、当社グループがこれまで培ってきた京都との結びつきを活かした旅行商品・サービス等を提供することで、さらなる観光需要の喚起とその獲得による一層の収益拡大に取り組んでいきます。奈良においては、2024年4月に、県が募集する「奈良県中小企業会館等宿泊事業者選定事業」で、優先交渉権者に選定されました。本事業の計画地は、春日大社・東大寺・興福寺などの世界遺産を望み、奈良公園の玄関口に位置していることから、奈良観光の拠点として非常に適しています。この計画地において、世界品質のラグジュアリーホテルを世界中で多数展開するハイアットと提携し、新たに上質なホテルを建設します。
コートヤード・バイ・マリオット京都駅の外観イメージ
奈良で計画中のホテルの外観イメージ
地域の自治体や事業者との連携
沿線の居住者や地域の課題を発見し、それを事業創出につなげ、沿線都市の価値を高めるために、地域の自治体や事業者と積極的に連携しています。「いいもの探訪」や「conomichi」といった事業に加え、駅構内の待合室の一部を活用して地域住民や地元企業がカフェやレストランを運営するような取り組みも行っており、これらを通じた地域の活性化を目指しています。また、地方の駅ビルにおいて地元のプロスポーツチーム等と連携し、イベントやグッズ販売などを企画することで、商業施設への集客を促すような取り組みも行っています。
神奈川県・相模原市と連携したイノベーション創出促進拠点の運営
FUN+TECH LABO
リニア中央新幹線の沿線のまちづくりにも参画しています。JR東日本・京王電鉄の橋本駅付近に建設中の中央新幹線神奈川県駅(仮称)周辺エリアは「ロボット産業特区」に指定されており、地域を挙げてイノベーション創出に取り組んでいます。そこで、同駅周辺開発に合わせ、イノベーション創出促進を目的とした神奈川県、相模原市、JR東海での連携協力協定を2023年11月に締結し、2024年3月には当社がイノベーション創出促進拠点「FUN+TECH LABO(ファンタステックラボ)」を開業しました。ここでは、オフィス区画利用企業・団体のほか、先端技術を有する企業・団体、大学、神奈川県、相模原市などと連携しながら、市・県民がイノベーションの一端を体感できるようなイベントや実証実験等を開催し、中央新幹線への期待感の醸成や沿線地域の価値向上を目指しています。
DXの推進
変化し続ける顧客ニーズや事業環境に対応するとともに、顧客の範囲を鉄道利用者から沿線居住者に広げるためにDXにも積極的に取り組んでいます。
TOKAI STATION POINT
「TOKAI STATION POINT」メインビジュアル
2023年10月に、JR東海グループ共通ポイントサービス「TOKAI STATION POINT」を開始しました。当社エリアの商業施設やホーム上の売店などでアプリを用いてポイントを貯めたり使ったりすることができ、また、1000万人超の会員を抱える「EXサービス」で東海道新幹線に乗車することで貯まるEXポイントとの交換もできるため、出張や旅行でポイントを貯めたお客様が、旅ナカや旅アトで弁当やお土産などの買い物で使うこともできます。さらに、TOKAI STATION POINTを通じて得られるお客様のご利用データを分析することで、一人ひとりの嗜好やニーズを捉え、お客様が求める情報をタイムリーに提供・提案し、新たな消費や移動を喚起することに取り組んでいます。加えて、アプリに備わったクーポンやスタンプラリー等の機能を活用し、EXサービス等とも連携させながら、様々な体験価値を提供していきます。
株式会社ADDIXの子会社化
2024年8月にはDX支援会社である株式会社ADDIXの全株式を取得し、子会社化しました。当社グループには駅・商業施設といったリアルなアセットや沿線の豊富な観光資源などがあり、今後もこの強みを活かして沿線都市と移動の価値を高めるためにはDXをさらに推進する必要があります。一方、ADDIXはデジタル技術を用いた事業開発、マーケティング、販売促進などのDX支援を主な事業としており、取引先の課題解決に向けて、調査・企画からシステム開発・運用までの全フェーズに一貫して対応できる点に強みがあります。同社の持つデジタル人材や豊富な専門知識、事業創造ノウハウなどを取り込むことで、当社グループのDXを一段と推進していきます。
名古屋駅における事業展開
当社最大の駅である名古屋駅では、2000年に開業したJRセントラルタワーズ(以下、「タワーズ」)と2017年に開業したJRゲートタワー(以下、「ゲートタワー」)を中心に様々な事業を展開しています。
JRセントラルタワーズ
名古屋マリオットアソシアホテル
(シグネチャースイート)
商業施設、ホテル、オフィス等で構成され、高さ245m、延床面積約417,000㎡を誇ります。オフィスは、開業以来高い入居率で推移しており、入居状況はほぼ満床となっています。ジェイアール名古屋タカシマヤは、駅直上という好立地を活かして、高い集客力を発揮しています。名古屋マリオットアソシアホテルは、駅直上の立地や高層階からの眺望、グレードの高い設備等によりご好評を得ています。
JRゲートタワー
タカシマヤゲートタワーモール
タワーズに隣接し、商業施設、ホテル、オフィス等で構成された高さ約220m、延床面積約260,000㎡の高層複合ビルです。オフィスは、将来の中央新幹線名古屋駅の直上に位置する好立地にあり、入居状況はほぼ満床となっています。タカシマヤゲートタワーモールは、約160のファッション・雑貨等のショップを集積させ、隣接する百貨店では捉えきれていないカテゴリー・価格帯のショップを取り揃えています。名古屋JRゲートタワーホテルは、客室の快適性と機能性を両立した宿泊主体型のホテルとして、名古屋マリオットアソシアホテルと合わせて幅広いお客様にご好評をいただいています。
駅構内での多様な事業展開
タワーズ・ゲートタワー以外でも、名古屋駅では様々な事業を展開しています。「名古屋うまいもん通り」では、遠方からのお客様が多い駅の特性もあり、「名古屋めし」を提供する飲食店を充実させています。また、全国的に話題となり、グッズ展開や他社とのコラボレーション企画も行っている、名古屋コーチンの卵を使ったひよこの形のプリン「ぴよりん」も名古屋駅構内で販売しています。さらに中央新幹線工事で運用を停止している在来線の線路上に飲食店を誘致するというこれまでにない取組みも行い、駅に新たな賑わいを生み出しています。
世界の山ちゃん名古屋駅1番線店