人材への取組み

当社は、人材こそが最大の経営資源と考えています。経営理念や行動指針を社員一人ひとりが自身の仕事に落とし込み、それをチームとしてまとめ上げ、しっかりとやり抜くことが、「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念をより高いレベルで実現することにつながります。このような考え方のもと、当社では人材育成と働きがいのある職場づくりに向けて、現場での教育訓練や各種研修、女性活躍推進の取組みや各種改善活動をはじめ、エンゲージメント調査の結果等も活用しながら、社員の意欲と能力を高め、企業価値の最大化に取り組んでいます。

人材育成

基本的な考え方

鉄道事業は、社員一人ひとりが自分の役割を完遂するための強い心構えを持ち、高い技術力と確かな知識を身に付け日々の業務に真摯に取り組むとともに、各部門が連携して高いレベルでさまざまな専門技術が統合されることにより、初めてトータルとして安全かつ健全なシステムとして機能します。
このことから、当社では、とくに鉄道現場において「規律」「技術力」「一体感」の3つを人材育成の基本理念として掲げ、当社の社会的使命を長期にわたり安定的かつ十分に果たし続けるための人材育成に取り組んでいます。具体的には、各職場における日常的な仕事を通じて、業務知識や技術を学ぶ「職場内教育訓練(OJT)」をすべての教育訓練の基本とし、総合研修センター等で実施する「集合研修」と、社内・社外通信研修制度等で知識・技能を習得する様々な「自己啓発」により補完しています。
また、主にオフィス部門においては、多様な社員の能力を活かし、新たな視点や柔軟な発想で、社内外の様々な環境変化に対応し、新たな価値を創造していくことが必要です。
当社では長期雇用を前提として、社員が必要な能力を備え、意欲を持ってその能力を発揮できるよう、人事運用も広く視野に入れ、計画的な人材育成に取り組んでいます。

当社事業の根幹を支える「鉄道の担い手」の育成

鉄道技術の多くは、経験の積み重ねによって築き上げられるものであり、人材育成は一朝一夕にはできないことから、「職場内教育訓練(OJT)」「集合研修」「自己啓発」を組み合わせながら、継続的に丁寧な社員教育に努めております。

①職場内教育訓練(OJT)

職場内教育訓練(OJT)では、例えば若手社員に対しては専門知識・技能習得を目的として「N-OJT」を実施しており、職場で一人前とされるために必要な項目と到達レベルを明示した「リスト」と個人ごとの育成計画、指導内容、指導結果を記録する「カルテ」を用いて、実務に習熟した社員から実際の業務を通じて、きめ細やかな指導育成を行っています。

②集合研修

当社事業の根幹を支える「鉄道の担い手」に対する職能別研修や、職場の核となる人材を育成する選抜研修、役職等に応じて実施する階層別研修等様々な研修に力を入れています。職能別研修では、職能や必要とされる技能レベルに応じた実践的な研修を実施することで、知識や技術力の向上を図っています。総合研修センターには、新幹線、在来線ともに車両の実物大シミュレータや、本線と同等の設備を備えた実験線等を配備しており、運輸、車両、施設、電気の系統ごとに充実した各種訓練設備を活用した実践的な教育を行っています。また、管理者層に対しては、部下社員一人ひとりの強みや能力を最大限に引き出し、職場やチームの成果を最大化する手法に関する研修等を実施しています。さらに、中堅層に対しては、例えばプロフェッショナル職を対象に、「リーダー研修」「ミドルリーダー研修」「フォアランナー研修」等の選抜型研修を実施し、将来を担うリーダーを育成しています。新入社員に対しては、入社後約2カ月かけて実施する新入社員研修を「学生からJR東海社員への重要な意識転換の場」ととらえ、当社社員として求められる規律・規範や安全最優先の意識を浸透させるためのカリキュラムを実施しています。

③自己啓発

総合研修センター

自己啓発についても、各種支援制度等を充実させ、意欲のある社員の能力開発を積極的に支援しています。当社では日常業務で必要となる専門知識や技能を体系的に習得できる社内通信研修(約30講座)を整備しており、毎月のレポート提出や習熟度を測る確認テストの実施等を通じて、グループ会社を含め多くの社員が自己研鑽に努めています。また、業務に役立つ資格約200種類について資格取得時に受験料相当額を支給する資格取得奨励金制度や、eラーニングを含む社外の通信研修を修了した際に受講料半額相当を支給する社外通信研修修了奨励金制度等を活用して毎年1,000人以上の社員が資格取得や社外研修に励んでいます。

多様な「個」を見出し育てる取組み

「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という経営理念を将来に亘って実現し続けるためには、経営環境の変化にも適切に対応するための多様な人材を質・量ともに充足させる必要があります。当社は、意欲ある社員に知識と経験を積む機会を提供することで、多様な知識と経験を持つ人材を当社の経営資本として育成しています。

①グローバル人材の育成

企業を取り巻く経済・社会環境が益々国際化し、複雑化する中で、将来の経営を担い、国際社会においても通用する人材の育成を目的に、全額社費負担による海外留学制度を設けています。これまで135名が、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、シカゴ大学等をはじめとした各国の大学へ留学し、幅広い知見の習得や人脈の構築を行っています。
また、社員を海外の企業等に派遣して先端技術等の調査に当たらせ、帰国後に調査結果を当社業務に役立たせることを目的に、海外調査派遣制度を設けており、これまで75名の派遣実績があります。
これら制度は公募制であり、幅広い職種から意欲ある社員を募ることでこれからの社業の推進や組織の変革に寄与する人材を戦略的に育成しています。

②公募型の研修や制度によるキャリア開発

当社では、多様な人材が意欲に応じて様々な知識と経験を積み重ねられるよう、公募型の研修や制度の充実を図り、社員のエンゲージメントを高めるとともに人材ポートフォリオの多様化を進めています。将来、マネジメント層として活躍が期待できる社員には、職場の核となり、けん引するために必要な素養を身に付ける「キャリア・アップ研修」をはじめとした教育機会や、異業種女性交流研修への参加、社外の社会人向けプログラムへの社員派遣等、視野や社外人脈を広げるための機会を拡充しています。
また、意欲・能力ある社員を見出して適材適所の登用を実現するとともに、これを契機として社員各々の自己研鑽意欲や挑戦心を喚起することを目的として、令和4年より社内公募によるキャリア開発を導入しています。
このほか、二重就業(副業・兼業)についても業務への影響、就業先の業務内容に応じて認めています。

③ICT人材の育成

新しい発想による新たなサービスの創出や業務改革推進のためには、ICT等新しい技術を積極的に活用できる人材の育成が急務であると考えています。当社では、階層別研修等を通じて全社員のICTリテラシーを高めるのはもちろんのこと、データ分析やシステム開発など実践的なスキルを習得する教育を実施し、ICTを活用して新たな価値を創造する人材の育成を強化しています。
なお、教育ツールとしてのICT活用にも注力しており、Web会議ツールやオンデマンドにて講義を視聴できるLMS(学習管理システム)の活用を進めているほか、集合研修においてもVR技術や立体投影システムを用いた訓練教材を活用するなど、専門的な技量・技術の深度化につながる取組みを積極的に行っています。

④事業系専門人材の育成

当社では、長期雇用を前提として計画的に人材を育成すべく、ジョブローテーションを行っています。他方、新規事業開発など、専門性を磨くことで質の高いアウトプットが期待できる職務については、適性の高い人材を見出し、事業推進本部やグル―プ会社を中心に人事運用を行うことで、専門性のある人材を育成しています。

キャリア・アップ研修

VRを使っている集合研修

働きがいのある職場づくり

公共性の高いオープンなサービスを提供する当社は、多様なお客様に喜ばれるサービスを提供し続ける使命を担っています。お客様の多様なニーズに応え続けるためには、多様なバックグラウンドを持つ社員一人ひとりがその能力をいかんなく発揮する必要があります。社員一人ひとりが働きがいを感じられる職場をつくることで、個々のアウトプットを引き出し、組織の成果の最大化を図っています。

女性活躍推進プログラム

当社では、社員が働きがいをもって十分に能力を発揮できる職場づくりのための取組みとして、女性活躍推進に力を入れています。男女雇用機会均等法等の趣旨を踏まえ、採用・配置等、人事面の取扱いにおいて男女の区別なく行っており、現在女性社員は、管理部門の業務、駅のフロント業務、新幹線・在来線の車掌・運転士業務、病院の看護業務をはじめ、広範な業務に従事しています。鉄道事業では、その業務の特性上、いわゆる深夜労働(22時から翌日5時にかかる時間帯の労働)が不可欠ですが、当社発足時の労働基準法では、一部の限定的な職種を除き、女性の深夜労働は原則として禁止されていました。そのため、1996年末における当社の女性社員の割合は、わずか1.3%にとどまりました。その後、1997年の労働基準法改正を受け、本格的に女性社員の採用を開始し、2021年度末時点で女性社員数は2,214人(全社員に占める割合は約12%)と大幅に増加しています。2021年には当社で初めて女性が執行役員に、2022年には取締役に就任したほか、部長·課長等、多方面で女性が活躍しています。
これまでも多様かつ柔軟な働き方を実現するための各種制度の充実に積極的に取り組んできましたが、これに加えて2020年7月に立ち上げた人事部長直轄の女性活躍推進プロジェクト主導のもと、これまで以上に男女を問わずすべての社員が仕事と子育てを両立させ、働きがいを持って十分に能力を発揮できる会社とすべく、2021年4月から取り組む女性活躍推進法に基づく行動計画を策定しました。
この行動計画では、新卒採用における女性の採用率を25%以上とする、女性の管理職の人数を1.5倍以上(2020年度末比)にするといった数値目標を掲げており、計画期間が終了する2026年3月31日までに目標を達成できるよう、全社的に取組みを推進しています。

女性活躍推進のためのポジティブアクション

単体従業員数と女性割合

女性管理者数と女性管理職比率

  • 非現業の係長、現業の助役、医療の看護長等を含む(休職者を含む、出向中の社員は除く)

男女別採用者数と女性の採用率

  • 中途採用者の割合は、2018年度2.5%、2019年度2.5%、2020年度1.3%

年次有給休暇の取得日数・取得率

育休休業等取得率

  • 育休休業のほか、育児目的休暇を含め、産出。
  • 2021年度より、改正育児・介護休業法(2023年4月施行)の算出方法による。

育児・介護等と仕事の両立支援制度

男女を問わずすべての社員が仕事と育児・介護を両立させ、意欲や働きがいを持って長きにわたり活躍するためには、各種制度の充実が欠かせません。2006年に運輸業界・鉄道業界で初めてファミリー・フレンドリー企業表彰※1「 厚生労働大臣努力賞」を受賞しましたが、それ以降も一層の充実に努めてきており、多くの制度が法律の定めを上回る水準となっています。
例えば、産前休業、育児休業、介護休業を法定の期間よりも長く取得することができます。特に育児休業等に関しては、取得率の維持・向上を目指すため、計画※2を定めて取り組んでおり、2021年度の育児休業等の取得率は女性が101%、男性が63%です。
また、仕事と子育ての両立を支援するため、非現業と一部の現業機関の社員を対象としたフレックスタイム制や、現業機関等において小学6年生以下の子を養育する社員が月に複数日の無給休暇を取得できる短日勤務制度等、より柔軟に働くことができる勤務制度を整備しているほか、企業主導型保育園の利用斡旋やベビーシッター等を利用した時に給付する子育て支援補助金等、各種の福利厚生制度を導入しており、実際に数多くの社員がこれらの制度を活用しています。
加えて、育児や介護等を理由に退職した場合において、一定の条件を満たした時に再雇用を行う制度や、勤務地域限定の社員が希望した場合には地域を跨いで異動ができるエリア・チェンジ制度等も整えており、ライフステージに応じて、社員が能力を発揮できるような環境づくりを進めています。

くるみん認定

  • ※1 仕事と育児・介護とが両立できるような様々な制度を持ち、多様で柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組みを行う企業を厚生労働省が表彰する制度。
  • ※2 2021年度から2022年度を計画期間とした行動計画の中で、育児休業等について、女性の取得率を100%、男性の取得率を30%以上とするなどの目標を設定しています。なお、当社はこれまで、次世代育成法の定める一定の基準を満たし、「子育てサポート企業」として厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を4回にわたり受けています。

育児等支援の取組み

JR東海社員持株会

社員の財産形成の一助とすることを目的として、原則全社員を対象としたJR東海社員持株会を設けており、社員からの拠出金と会社からの奨励金により当社株式の買付を行っています。

障がい者雇用

多様な人材活用や企業の社会的責任の観点から、障がいのある方の雇用促進に積極的に取り組んでおり、個別の障がいの程度等に配慮しながら、事務部門や現業部門を含めて幅広く適材適所に配置しています。
2006年10月には、「障害者雇用の促進等に関する法律」に基づく特例子会社である「株式会社ジェイアール東海ウェル」を設立し、主な事業として当社グループ内の印刷業務及び封入封緘業務を行っています。なお、2021年10月から、社員の福利厚生や健康管理の増進の一環として、マッサージサービスを開始するなど、事業拡大を行っています。
このような取組みの結果、2021年6月1日時点の障害者雇用率は、2.74%と法定雇用率を上回る雇用を維持しています。
今後も、改正障害者雇用促進法の趣旨に基づき、募集・採用の場面で差別を行わないことはもちろん、採用後も障がいによる制約に配慮しつつ、個人の能力を有効に発揮してもらうべく就労環境の整備を適切に進めていきます。

キャリア形成を支援する取り組み

当社では、職場におけるコミュニケーションの活性化が生産性の向上に繋がるという考えに基づき、半期に一度、上司による社員へのフィードバックや目標のすり合わせを目的とした面談を実施しています。また、ジョブローテーションによる社員育成を基本としつつ、社員一人ひとりのキャリア形成を支援するため、毎年職務やキャリアについての希望調査を行うほか、人事部門による社員面談などを行っています。

能力向上と生き生きとした職場づくり ~「O n e S T E P 」活動~

活動風景(手法を使って見え
る化し全員参画で議論)

職場の諸課題を、複数の社員が1つのチームとなって当事者意識を持って議論し、自らの創意と工夫で解決、改善していく「One STEP」活動を推進しています。この活動の名称は「十人の一歩は一人の十歩に勝る」という思いを込めたもので、サービスの向上、安全性の向上、コストダウン等、多岐に亘るテーマの活動を通じ、社員の能力を向上させ、働きがいのある活き活きとした職場を作り、職場の体力強化・会社の発展を目指しています。

健康経営

当社が社会的使命を将来にわたって果たしていく上での基盤となる社員の健康保持・増進を図るため、健康経営を積極的に推進しています。

健康経営推進の目的

経営理念に示す「日本の大動脈と社会基盤の発展に貢献する」という使命を担うためには、社員一人ひとりがその持てる力を最大限発揮することが大切であると考えています。その基盤となる心身の健康の保持・増進を図るため、2018年4月に当社の健康施策の全体方針となる「健康づくり指針」を制定し、健康経営を積極的に推進しています。

健康経営推進の目的(課題と取り組み)

健康経営推進体制

人事担当役員をトップとし、人事部、直営医療機関(名古屋セントラル病院)、産業保健部門(健康管理センター)が連携の上、健康経営を推進しています。

健康経営推進体制(イメージ)

数値目標

健康上の理由により能力を最大限発揮できない社員を減らすことを目的に、産業医の知見に基づき、心身不調との相関性が高いとされている健康関連指標の改善に向け、取り組んでいます。これは、疾病のハイリスク者やその予備群になってから支援を行うのではなく、リスクを抱えるもっと前の段階で取組みを行い、病気を未然防止する、という考え方に基づくものです。
心身不調との相関性が高いとされる健康関連指標は複数ありますが、まずは「運動習慣」と「喫煙率」に焦点を当て、2023年度までの数値目標を設定し、社員の行動変革を促しています。

これまでの取組み

健康状態の把握、健康課題・推進施策の共有

職場の活力向上プロジェクト全社員対象のストレスチェック(法定を上回る項目数を実施)に加えて、新入社員や異動者、昇格者には当社独自の指標を追加したストレスチェックを実施し、高ストレス者には社内医療職による面談を実施しています。また、新任のマネジメント層(部長職相当)や健康推進担当者に対し、当社社員の健康課題や当社の推進施策を共有する会議を毎年実施しています。

職場の活力向上プロジェクト

社員の健康状態や労働環境を踏まえ、社内医療職の支援のもと、各職場の安全衛生組織が中心となり、メンタルヘルス対策・生活習慣病対策の両面から、様々な自発的・継続的な取組みを行っています。この中で、健康診断やストレスチェックの集団分析結果等も有効に活用しています。

禁煙支援

社内医療職による衛生講話、健診・職場巡視時の面談指導、禁煙相談窓口での相談受付、社内喫煙室集約等の支援を実施しています。また、ジェイアールグループ健康保険組合による「禁煙サポートプログラム」の活用も積極的に呼びかけています。

運動習慣化支援

健康増進意識の底上げと運動の習慣化を支援するため、以下のイベントを実施しています。

オンラインフィットネスアプリを活用した健康増進

ヨガ、ウォーキング、瞑想等、全11ジャンル、計700クラスを超えるプログラムが視聴できるアプリを法人契約し、指定課題をクリアしてゴールを目指す個人戦や、視聴実績を競うチーム対抗戦等、楽しく健康増進に取り組める内容としています。

ウォーキングイベント「みんなで歩活」

ジェイアールグループ健康保険組合にて実施しているウォーキングイベント「みんなで歩活」について、会社としてもインセンティブを設定し、全社で取組みを推進しています。

健康経営銘柄2022に選定

「健康経営銘柄」とは、経済産業省と東京証券取引所が共同で、従業員等の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組む「健康経営」を実施する上場企業の中から、特に優れた取組みを実践している企業を選定するものです。「健康経営」を意識したさまざまな取組みが評価され、当社は、「健康経営銘柄」に初めて選定されました。
これからも、社員一人ひとりがその能力を最大限発揮することが出来るよう、心身の健康の保持・増進を進めていきます。

人事関係データ