当社は、東海道新幹線とネットワークをなす東海地域の在来線、さらには名古屋駅におけるJRセントラルタワーズとJRゲートタワーに代表される、鉄道事業と相乗効果が期待できるグループ事業の強化に継続して取り組むことで、事業収益の拡大を図るとともに、社会基盤の維持・発展に貢献しています。
地域の社会基盤としての使命
名古屋・静岡を中心とした地域に根差した在来線運営を日本の大動脈輸送と一体的に行い、人々の生活を支えています。当社が運営する12線区の在来線は、営業キロでは約1,400kmと東海道新幹線の約2.5倍の距離に相当し、通勤・通学をはじめとする日常生活の移動手段、つまり、地域の社会基盤としての使命を果たしています。これまで新型車両の投入やそれに伴う速達化、フリークエンシーの向上等、サービス向上の取組みを進めてきました。特急列車については、新幹線との接続の充実により、新幹線・在来線一体となったネットワークの整備や、季節やイベントによる需要の変動に合わせた増発・増結により弾力的な輸送力設定を行うことで利便性を高めています。さらに、2022年度からは、特急「ひだ」にてハイブリッド方式を採用した新型特急車両HC85系の営業運転を開始しており、2023年度にかけて、特急「ひだ」「南紀」のすべての列車に投入を進めました。HC85系は、ハイブリッド方式の鉄道車両では国内初の最高速度120km/hでの営業運転を実現しています。また、普通列車についても、快速列車体系の整備、発車時刻の等間隔化、朝夕の通勤時間帯を中心とした列車の増発・増結等、ご利用いただきやすいダイヤの設定に努めています。加えて、新形式の通勤型電車315系の営業運転を開始しました。今後、2025年度にかけて、名古屋・静岡都市圏を中心に順次投入します。これら新車の投入により、安全性や安定性、快適性、利便性といったお客様サービスの向上、環境性能のさらなる向上等を実現します。
沿線地域と連携した営業施策の展開
当社の沿線は多くの観光資源に恵まれています。沿線観光地の地元の方々や旅行会社との連携を深めつつ、魅力ある観光資源について、駅や列車内、ホームページ等で宣伝を行うとともに、様々な営業施策を実施し、観光需要の喚起に努めています。例えば、人里離れた山間にある駅舎や風光明媚な区間を走行する飯田線において、急行「飯田線秘境駅号」を観光需要が高まる時期に運行し、非日常感溢れる鉄道の旅を提案しています。さらに、当社の駅を基点として駅周辺の観光名所を散策できる予約不要、参加費無料の「さわやかウォーキング」を展開しています。このほか、JR6社で行うデスティネーションキャンペーンを通じて、自治体や旅行会社等と連携し、魅力ある観光素材・商品の開発や観光列車の運行等を行い、地域の活性化に寄与するとともに、新幹線・在来線のより一層のご利用拡大に取り組んでいます。
JR東海グループの事業展開
当社グループでは、運輸、流通、不動産、その他の各事業を展開しています。運輸部門では、鉄道事業とバス事業を、流通部門では、百貨店の運営や駅・車内における物品・飲食物等の販売サービスを行っています。不動産部門では、駅及び高架下の開発や、駅ビル等の不動産賃貸等を行っています。その他の事業部門では、ホテル事業や旅行業、広告業等を展開しているほか、鉄道車両等の製造、各種鉄道設備の保守・検査・修繕等を行っています。
JRセントラルタワーズ・JRゲートタワーの2館一体運営
当社最大の駅である名古屋駅の開発はグループ事業の柱であり、2000年に開業したJRセントラルタワーズ(以下、「タワーズ」)と2017年に開業したJRゲートタワー(以下、「ゲートタワー」)は、名古屋のランドマークとして定着し、中部圏の経済発展に大きく貢献しました。今後も両ビルを一体的に運営し、事業コンセプトの棲み分けによる相乗効果の発揮や営業連携を通して、事業収益の拡大を図ります。
JRセントラルタワーズ
商業施設、ホテル、オフィス等で構成され、高さ245m、延床面積約417,000㎡を誇ります。オフィスは、開業以来高い入居率で推移しており、入居状況はほぼ満床となっています。ジェイアール名古屋タカシマヤは、駅直上という好立地を活かして、高い集客力を発揮しています。2021~2022年度にかけて、リビング売場のリニューアル等を実施し、収益の確保を図りました。名古屋マリオットアソシアホテルは、駅直上の立地や高層階からの眺望、グレードの高い設備等によりご好評を得ています。
JRゲートタワー
タワーズに隣接し、商業施設、ホテル、オフィス等で構成された高さ約220m、延床面積約260,000㎡の高層複合ビルです。オフィスは、将来の中央新幹線名古屋駅の直上に位置する好立地にあり、入居状況はほぼ満床となっています。タカシマヤゲートタワーモールは、約160のファッション・雑貨等のショップを集積させ、隣接する百貨店では捉えきれていないカテゴリー・価格帯のショップを取り揃えています。名古屋JRゲートタワーホテルは、客室の快適性と機能性を両立した宿泊主体型のホテルとして、名古屋マリオットアソシアホテルと合わせて幅広いお客様にご好評をいただいています。タワーズと一体で管理・運営を行うことで、効率性を追求するとともに、タワーズにはない新たなコンテンツを加え、2館での魅力を一層高めています。
グループ事業の収益力強化
事業環境の変化に対応すべく、低コスト化と効率的な業務執行を徹底し、グループ各社の経営効率を磨き上げていきます。また、鉄道との相乗効果で培った力を活かし、新たな事業展開を進め、収益力のさらなる拡大を図ります。例えば、グループ各社の経営効率向上では、駅構内商業の魅力向上と収益力強化を目的として、東海キヨスクとジェイアール東海パッセンジャーズを2023年10月に合併し、JR東海リテイリング・プラスが発足しています。ジェイアール名古屋タカシマヤでは、メンズゾーンの新設を含むラグジュアリーゾーン大規模リニューアルを段階的に進め、2023年9月29日にグランドオープン、全52ブランドと東海地区最大級の品揃えを実現しています。名古屋マリオットアソシアホテルでは、スイートルームの全面改装を行い、富裕層やインバウンドの顧客ニーズに対応していきます。沿線の不動産開発は、京都駅八条東口より徒歩3分の場所に土地を取得し、国内外のお客様にご利用いただける魅力あるホテルを2026年度に開業予定です。また、2023年10月にはJR東海グループの駅商業施設(約1,000店)で利用できる共通ポイントサービス「TOKAISTATIONPOINT」を開始しました。