Q:大深度地下を中央新幹線が通る場合、土地の権利はどうなりますか。
- 大深度地下の公共的使用に関する特別措置法では、公共の利益となる一定の事業に対し、土地所有者等による通常の利用が行われない大深度地下空間に使用権を設定するための要件、手続き等が定められています。
- 大深度地下使用にあたっては、法に則り、安全上の基準などの審査を受け、国の認可を受けた上で大深度地下使用することを考えており、認可を受け使用する場合には、地上の権利が及ばないとされています。
参考
「詳解 大深度地下使用法」(大深度地下利用研究会編著・大成出版社)
○第1条の趣旨(抜粋)
(ⅲ)土地所有権との関係
日本国憲法第29条第2項では、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」と規定され、これを受ける形で、民法第207条では、「土地ノ所有権ハ法令ノ制限内ニ於テ其土地ノ上下ニ及フ」と規定されている。
一般に、民法207条の規定は、ドイツ民法やスイス民法の規定例にならって、土地所有権の及ぶ範囲は土地所有者にとって利益の存する範囲内に限ると限定的に解する考え方(制限説)が通説となっている。しかし、このような制限説によっても、利益の存する限界はどこまでかということが問題となる。大深度地下は、第2条において解説するように、少なくとも地下40m以下の深い地下であるが、その大深度地下に土地所有権が及ぶか否かについては、現在の我が国の法制度においても所有権等の権原(ある法律的行為又は事実的行為をすることを正当とする法律上の原因)に基づくものとの前提で、井戸、温泉井等が地下数百mまで掘削されていること等にかんがみれば、大深度地下にも土地の所有権が及んでいると解される。しかしながら、大深度地下は土地所有者等によって通常使用されない空間であり、本法により、公益性を有する事業のために公法上の使用権(公法関係の法律に基づき設定される権利で、特定の公益事業のために、その事業者が他人の所有に属する土地その他の財産権の上に行使することのできる使用権)を設定しても、土地所有者等に実質的な損失が生じないことから、使用権の設定を土地所有権に優先させることとされている。