Q:在来型新幹線方式でなく、超電導リニア方式としたのはなぜですか。
- 交通政策審議会の答申では、「総合的に勘案し、中央新幹線の走行方式として、超電導リニア方式を採択することが適当である」と見解が示され、国土交通大臣は平成23年5月26日に、全国新幹線鉄道整備法に基づき、走行方式を超電導磁気浮上方式とする整備計画を決定しました。
- 当社としても、従来から、中央新幹線を実現する際には、その先進性や高速性から超電導リニアの採用が最もふさわしいと考え、技術開発に取り組むとともに、山梨リニア実験線を建設し、走行試験を行ってきました。
- この山梨リニア実験線では、平成9年4月から先行区間18.4kmにおいて走行試験を重ね、平成23年9月までの累計走行距離は、地球約22周分となる87.8万kmに達しています。加えて、平成15年12月には鉄道の世界最高速度となる時速581kmを記録するなど、順調に技術開発の成果をあげてきました。この結果、平成21年7月に開催された国土交通省の超電導磁気浮上式鉄道実用技術評価委員会において「超高速大量輸送システムとして運用面も含めた実用化の技術の確立の見通しが得られており、超電導磁気浮上式鉄道について営業線に必要となる技術が網羅的、体系的に整備され、今後詳細な営業線仕様及び技術基準等の策定を具体的に進めることが可能となった」と評価されております。さらに、平成23年12月には国土交通大臣により超電導リニアに関する技術基準が制定されるなど、超電導リニアは、既に実用技術として完成しており、超電導リニア方式の採用に問題はありません。
- 超電導リニアは、時速500kmという高速性だけでなく、全速度域にわたる高い加減速性能及び登坂能力の点で優れています。さらに、超電導リニアは車両が強固なガイドウェイ側壁で囲まれており脱線しない構造であることなど、地震に強いシステムであり、安全安定輸送上大きな利点があります。
- また、超電導リニアの高速特性を発揮させるべく3大都市圏を直線的に結び都市間の到達時間短縮効果を最大とすることにより、日本の経済及び社会活動が大いに活性化することはもとより、東海道新幹線の活用可能性が広がるほか、超電導リニアという最先端技術がインフラの基幹技術として実用化されることにより製造業の活性化への貢献等の効果が期待できると考えています。
参考
交通政策審議会陸上交通分科会鉄道部会中央新幹線小委員会
「中央新幹線の営業主体及び建設主体の指名並びに整備計画の決定について」答申(平成23年5月12日)
[3.走行方式について]より抜粋
走行方式については、これまでの全幹法に基づく調査等において、粘着駆動による電車方式(以下「在来型新幹線方式」)又は超電導リニア方式の採択が検討されてきたことを踏まえ、新たな技術である超電導リニア方式の安全性等を含め、両者を比較し、審議を行った。その結果得られた見解は以下の通りである。
- 在来型新幹線方式と超電導リニア方式の性能面の比較
(i)高速交通機関としての性能の比較
在来型新幹線方式は、昭和39年に東海道新幹線において時速200km超の営業運転を世界に先駆けて実現し、その後世界各国において高速鉄道の建設が進められる契機となった。東海道新幹線の開業以降も、継続的に技術等の革新努力が積み重ねられ、速達性やエネルギー消費等の性能も大幅に改善されてきており、今後もさらなる改善が図られるものと考えられる。また、開業以来46年間、乗車中の旅客の死傷事故は皆無であり、列車の平均遅延時間が1分未満であることなど、安全性及び信頼性の観点で優れた実績があり、地震対策も含めて、在来型新幹線方式の技術面・ノウハウ面での成熟度の高い蓄積は大いに評価できるところである。さらに、在来型新幹線方式を採用した場合、東海道新幹線以来築かれてきた約2,000kmの新幹線ネットワークとの相互接続が可能となること、超電導リニア方式に比べて高速特性が劣る分、建設費用やエネルギー消費の面で利点がある。
一方、我が国が昭和30年代後半から独創性の高い技術開発を進めてきた超電導リニア方式は、時速500kmでの高速走行性能、全速度域にわたる高い加減速性能及び登坂能力などの面で高速交通機関として現行の在来型新幹線方式より優れている。加えて、レール上を車輪で走行する在来型新幹線方式と比較して、超電導リニア方式は、地震時などにおいて電力の供給が停止された後でも電磁誘導作用により軌道中心に車両が保持されること、ガイドウェイ側壁により物理的に脱線を阻止できる構造を有することから、安全確保上の大きな利点がある。なお、鉄道施設の耐震性は、在来型新幹線方式と同様である。
このように両走行方式ともに優れた点があるが、超電導リニア方式の方が在来型新幹線方式に比べ費用が高くなるものの、時間短縮等による便益がより大きくなり、費用対効果の観点からは相対的に有利な選択肢となっている。
(ii)超電導リニア方式特有の現象への対応
騒音、振動、微気圧波及び空気振動など周辺生活環境への影響については、従来から在来型新幹線方式について定められた環境基準があり、超電導リニア方式についても、これらを満たすことを前提として技術開発が行われてきた。超電導リニア方式を採択する場合、在来型新幹線方式に比べて速度域が高いが、これまでの技術開発の結果、明かりフードの設置などの必要な対策を実施することにより、超高速走行中であっても、在来型新幹線方式の環境基準と同等の範囲内に収まる見込みとなっている。
また、磁界の影響及びゴムタイヤの使用に関する安全性の確保については、これまでの技術開発の結果、車体への磁気シールドの設置など磁界の低減方策を取ることにより、磁界の影響を国際的なガイドラインを下回る水準に抑制することが可能であり、ゴムタイヤ走行に係る車両の火災対策等についても安全確保のための対応方針が示され、その内容が小委員会において確認されている。
(iii)異常時の対応
在来型新幹線方式は、これまでの技術面・ノウハウ面での成熟度の高い蓄積により、地震等の異常時における安全確保について十分な実績を有している。一方、超電導リニア方式は、これまでの技術的な検討により、地震や大深度地下での火災等の異常時における安全確保について、整備計画段階での対応方針が示されており、その内容が小委員会において確認されている。 - 新たな鉄道技術の確立と海外展開の推進
超電導リニア方式は、昭和39年に東海道新幹線が開業して以来の革新的な超高速輸送システムであり、我が国の鉄道技術の更なる発展を支えるとともに、超電導技術については、他分野への応用も期待される。
また、超電導リニア方式は、超電導磁石を利用することにより、世界最高速度での走行を可能とする我が国の独創的な走行方式であり、その世界的な鉄道技術の先進性を象徴的に示すものである。このような走行方式による超高速鉄道の実現は、超電導リニア方式のみならず、我が国の鉄道技術全般の国際競争力を向上させることとなり、我が国の成長にもつながる海外展開推進の観点からも極めて重要である。
以上を総合的に勘案し、中央新幹線の走行方式として、超電導リニア方式を採択することが適当である。